カブトムシ飼育Q&A

カブトムシ博士:H. Takasaki
Guardian of biocultural diversity
(自然と癒合した多様な文化{遊びを含む}の守護者)

カブトムシを育てるという事

 なぜカブトムシを育てるのですか?

 カブトムシはクワガタムシやセミとちがって、1年で一生を終えます。したがって、秋の幼虫は、翌年の夏には成虫になります。幼虫の飼育は成虫よりも簡単で、朽ち木(椎茸のホダ木のくさったようなやつ)をプランターにいっぱい入れて(水がぬけるように、栓はしない)、半日陰(まったく日のあたらないところは不可)で雨のかかるところに置いておくだけです。だいたい梅雨の後半から蛹になりますから、その頃家の中でカブトムシが出てきて徘徊しても大丈夫な部屋か玄関にでも移しておきます。そうしておけば、お客さんが来るとカブトムシと「こんにちは」ということになります。死んでも生き返る電子ペットの飼育よりは、子どもの情操教育(というほど大袈裟なもでもないですが)にはよいでしょう。

 まだ、子供が小さいんですが、、、

 お子さんはおいくつですか。わたしの家から成虫をもっていって、それに卵をうませ今年39匹のカブトムシの成虫が出てきて、その卵から生まれた幼虫を今また継続して飼育している小学1年生がいます。ですから、親も興味があって飼育につきあってやれれば、幼稚園の年長組さんくらいから上は大人まで十分楽しめます。ちなみに、その小学1年生のお母さんは、以前はイモムシなどまったくさわれなかった人なのですが、今ではカブトムシの幼虫を手のひらにのせて平気になってしまいました。食べるところまではいきませんが。

 カブトムシは、1年しか生きないんですか?

 通常は、成虫は冬を越せません。

 ところで、ときどき1年では大きくなりきれずに、冬を二回越して、大きな成虫になる奴もいます(とくに寒冷地で)。クワガタムシなど、2-3年かけて成虫になって、そのあと5年くらい生きたりするものもいるようです。

 カブトムシを採集すると、生態系に悪い影響があるのではないでしょうか。

 カブトムシは、もう20年以上業者の養殖によって本州や四国産が全国に出荷されていますから、いまさら大きな生物的な遺伝子の撹乱は問題にもなりません(もう起こってしまったし、人間の経済活動による撹乱以上のものにはならないでしょう)。

 また、補足説明しますと、幼虫を採集すると、滅びてしまわないかと心配になるかもしれませんが、昆虫は多産多死の生き物です。明太子を食べて、スケトウダラが滅びることを心配しますか。親のオスとメスの性比が1:1なら、2/(メス1匹が一生にうむ卵の数)が平均した次世代の生き残りの確率です(安定した数を繰り返す集団での話)。カブトムシの成虫の性比は大体1:1です。産卵数は約50個です。したがって、自然の状態では平均4%しか成虫にはならなくてもトントンなのです。今回わたしが採集してきた幼虫の数は、メス1匹が生む卵の数にもとどきません。皆さん一人一人が頑張ってもまず1シーズンにこのレベルより多くを採集することはできないでしょう。採集は、昆虫の生存にはよほど特殊な例を除いてまったく脅威にはなりません。むしろ、そのような自然のしくみのことを考える人間を増やす効果の方が大きいです。

 長野県にギフチョウという蝶のいるところがありました。蝶の採集者がアミを振り回すので、保護条例をつくって採集禁止にしました。ギフチョウを採集する人はこなくなって、ギフチョウは保護されたのでしょうか。スキー場を作りました。ギフチョウはいなくなりました。鹿児島県でも栗野町が栗野岳牧場付近を保護区に指定して、採集禁止にしました。九州ではそこにしか生息しないウスイロオナガシジミという蝶がいるのです。その保護区に何が起ころうとしているのか。ドカチンです。芸術の森とかいって公園に「整備」するのだそうです(20世紀末の話)。本末転倒です。保護をするのなら、昆虫採集者には、生息状況をモニターしてもらうという意味で採集をしてもらうべきなのです。環境の悪化で昆虫採集で滅びる程度しか残っていなければ、昆虫採集をしなくても遅かれ早かれ滅びます。

幼虫の探し方

 なんだか自分でも幼虫掘りをしてみたくなりました。どういうところを掘ればいいのか、コツを伝授していただけませんでしょうか?

 理論的に解説します。カブトムシの幼虫の生息環境はどんなところか考えます。

1.親虫が生息できる環境が近くになければいけない。すなわち、カシやシイの常緑樹林、あるいはクヌギやコナラの落葉樹林、簡単にいえばドングリのひろえる広葉樹林の周辺がポイントになります。町中に残った小さな林(30mx30m程度)でも生息していることがあります。

2.幼虫の餌がなければならない。すでに解説しましたが、堆肥やシイタケのホダ木の朽ちたものはよい餌になります。田舎の製材所の古いおがくずが積んであるところもよいです。畑のわきに積んだままくさったワラとか、そのほか、橋の下やわきなどに木工所からの木屑が捨ててあって古くなったものなども、1の条件を満たしていればグーです。

3.まったくの日陰ではなく、半日くらいは日のあたるところがいいです。

4.1、2、3をすべて満足するところを重点的に探せばよいです。あとは、百戦錬磨あるのみです。9-11月と3-5月が掘りやすいです。寒くなると、より深いところにもぐります。また、梅雨の頃に蛹になりますから、その頃に移動させるのはかわいそうです(蛹になるのを失敗する確率が高くなる)。

 具体例として鹿児島での例:今年の9月に私の親指くらいになった幼虫(兄の子どもにやりました)をとったポイントは、車のビュンビュン通る国道のすぐ横でした。指宿枕崎線の山川駅の少し北の道路脇にギョボク(ツマベニチョウの食草)が植栽されている芝生の緑地帯が、何個所かあるのですが、その1つに電信柱ほどの丸太を1mくらいに切ったものがころがっていました。適度に朽ちているようだったのでひっくり返すと、BINGO!というわけです。

 ちなみに、山川駅付近では、ハイビスカスの花にツマベニチョウ(南薩山川あたりが分布の北限)が飛んでくるのを春−秋の季節は簡単に見ることができます。ハイビスカスにツマベニチョウの組み合わせは、実に南国的で、絵になります。その山川駅前にあるクリヤ食堂・旅館は、安くて(日本一安い旅館!;誇張ではない)、うまい(カツオのたたき定食)。

 自分で、幼虫を探す方法を教えて下さい。

 まず、シイタケのホダ木のもうシイタケも生えなくなったものが、日当たりのよい場所にまとめて捨ててあるところが、第一候補です。暗いところでは、幼虫があまり好きではない菌類が増えるようです。シャベル、スコップ、クワなどあると作業が楽です。まず少しほって、糞を探してください。糞が見つかればいます。

 幼虫は、どんな所にいますか?

 先週で中国地方の真夏日はおしまい、という気がしたので、週末に今期最初のカブトムシの幼虫掘りに出かけました。というより、過ぎ行く夏を惜しんで最後のクワガタムシ採りに出かけたのですが、そちらがさっぱりだったので、カブトムシの幼虫掘りに切り替えたわけです。成虫は、夏が早くきたせいで、仕事が一段落しないうちに最盛期が終わってしまい、今年は不作でした。近所のポイント(徒歩5分)で去年は何匹もつかまえたのに、今年は0でした。しかし、夏が早くきたということは、産卵も早く始まったということで、今年の秋の幼虫のサイズは大きいのでは、との期待をしながら、かねてから目をつけていた別の朽ち木がゴロゴロとある場所(自転車20分)に行くと、幼虫のウンチが目にとまりました。ビンゴ!これで近所のポイントにも、来年成虫がこなければ、放してやることができる。

 ここ掘れワンワンと、せわしなく手を動かして(クワガタムシ採りのつもりで出かけたのでスコップなし)、あっという間に去年採集した数をはるかに越える太い幼虫を袋に入れていました。土曜日のことです。その日は、一人だったので、この楽しみを子どもたちにも教えたいと思い、昨日の日曜日、再度子ども(5歳+8歳)と子どもの友達(小学生)と一緒に出かけました。とれました。襲ってくるヤブカをものともせず、子どもたちも、自分の指の何倍もの太さの幼虫を夢中でつかんでいました。近くの山道でひさしぶりにマムシのでかい奴を見かけたのも収穫でした。

 幼虫掘りの実例を教えて下さい。

 11月前半に、ショベルと移植ゴテを持って今シーズン最初のカブトムシ掘りに出かけました。

下の子が行っている保育園の友だちの祖父母方にカキもぎに寄せてもらったのですが、畑のすみに落ち葉でつくった堆肥が来年のタバコ栽培用に準備してあったので、頼んで掘らせてもらいました。少し掘って、幼虫の糞があることを確認して、掘り進めましたが、なかなか姿を現わしませんでした。少し、山に入ったところだったので(標高300m)、霜が降り始めており、幼虫は堆肥の一番底の硬い地面に接するところまでもぐっていました。汗だくになって掘りました。

幼虫の飼育

 幼虫を飼育するプランターのサイズは、どのくらいですか?

 サイズは、大きければ大きいほどいいです。

 でも、とくに高価なものでなくて、一番安いものでかまいません。成長過程で、1匹で大体2リットルくらいの朽木や腐葉土を食べるそうです(この数値は、糞の量だったかもしれません)。最終段階の3齢幼虫でその半分以上を消費するはずですが、すでに3齢も後半に入っていますから、大目に換算して1匹1リットルというところでしょうか。10匹で10リットルですが、たっぷりとやりましょう。シイタケやエノキタケなどのイシツキの部分もよろこんでたべます。すなわち、菌類食者なのです。

 20cmx20cmx70cmくらいだったかの、よくスーパーや園芸用品屋の安売りで売っている1つ200円くらいのプランターで大丈夫です。地上に出たときに、縁から外に出ないように、腐葉土や朽ち木は、ぎりぎりよりも縁より3cmくらい下までにした方が安全です。幼虫の間は、モーゴモーゴともぐるだけですから、蓋は要りません。もし奮発するのであれば、深めで厚めのやつを入手すれば、上に金網張りの木枠をはめて、重しをのせる(カブトムシは力持ち)だけで、成虫の飼育にも使えます(下に腐葉土や朽木クズを敷いておくと、そこに産卵;成虫が死んだら、上に腐葉土や朽木クズを足して、また幼虫を飼育する)。もっとも成虫は、お子さんが眺めるのであれば、透明のプラスチックケースも便利です。

 腐葉土はどのくらいの厚さにすれば、いいですか?

 深さ25cmくらいのプランターに、上までたっぷりと腐葉土や朽ち木を入れてそれを、雨のかかる屋外で、一日のうち半日ほど日のさすところに置いてやればよいです。そのままで蛹まで大丈夫です。プランターの水ぬき穴をふさがないように注意するだけで、雨ざらしならほったらかしでOKです。屋内に入れるとダニが増えたり、カビが生えたり、いろいろなトラブルが発生します。腐葉土の層が深い分には、いくら入れてもかまいません。

 プランターの置き場所はどこが、いいですか?

 幼虫の飼育容器は、排水だけは確実になるようにして、雨ざらしが管理は楽です。春先(4月)までは、ポカポカと半日くらい日のあたるところがいいです。

 幼虫の大きさにもいろいろあるのですか?

 大きいものは、前年の9月の段階であの大きさにちかくなっています。ほとんど全部が3齢(終齢)幼虫になっていると思います。体が小さくても頭の大きさが同じであれば、同じ齢です。小さいやつは今からも大きくなるでしょう。大きい奴はもうそんなに大きくなりません。

 幼虫の餌は、何がいいですか?

 餌は、一番安上がりなのは、近所の山に行って広葉樹の朽ち木を拾ってくることです。鹿児島も町になってしまって見つからないと思うかもしれませんが、グリーンベルトを歩けば落ちていたりします。また、フェニックスヤシのぼろぼろになったところもOKです。郊外では、もちろん簡単に朽ち木は拾えるでしょう。シイタケのホダ木の朽ちたものも上等です(シイタケどろぼうに間違われないように)。

 市販の園芸用の腐葉土は、殺虫剤が入れてある可能性があります。

 蛹になるまでまだ4ヵ月くらいはありますから、生け花のゴミを3cmくらいに切ったものを、一度よく乾かして、それを適当に朽ち木のクズや幼虫の糞(それらが菌類のタネ)と混ぜて雨ざらしで2週間ほど置いた自家製腐葉土を、やって大丈夫でしょう。台所の生ゴミは、水分が多すぎてよくありません。キノコ類のゴミは、たいへんいいです。

 幼虫の糞は、いつ取り除けばいいですか?

 タイミングというほどのむずかしいことはあまりありません。腐葉土や朽木クズのなかの糞の割合が1/3-1/2を超えたかな、と見える時期になったら、ひっくり返してまだ食べていない朽木を戻してさらに腐葉土や朽木を足して、それに幼虫を戻せばいいです。

 簡単にするには、プランターをもう一つ用意してそちらに新しい腐葉土か朽木を入れて、幼虫だけを拾い出して移す。もちろん古い方に残った食べ残しも移してよいです(クワガタムシの幼虫では、その糞のなかに幼虫にとっての有用微生物がいる、という有力な説があるので、カブトムシの場合も、古い食べ残しと、糞の一部をもどしてまぜることには意味があるかもしれません)。時期的には、今(春先)から幼虫飼育を始めたとして、せいぜい5月上旬から中旬に一度すれば十分というところでしょう。

 プランター以外でも飼育できますか?

 10匹いる場合、半分をプランター、残りを透明プラスチック水槽で飼ってみるのも面白いでしょう。モゴモゴと動き回る音を聞いたり、糞がお尻から出るのを観察するのは、時間を忘れます。庭に余裕のあるところでは、コンクリートブロックで四角い枠を土の上に作り、その中に腐葉土や朽ち木を入れてやるといいです。その場合、蛹になるのは、土にもぐった位置になることが多いようです(高校生のとき一度ためしました)。

 カブトムシの育て方を見ると5月頃にカブトムシのいるところをひっくり返してかびなどが生えていないかチェックしなさいと書いてありますが。

 ひっくり返してください。わたしのところでは、おとといやりました(5月)。プランターは水抜きの穴があけてありますが、幼虫の糞がつまって、水はけが悪くなっているはすです。これで気温が上がると、幼虫は死に、冬虫夏草が生えてくれば大金持になれるのですが、ほとんどの場合腐るだけです。野外に置いて失敗する場合の大半は、水はけの不良です。一番簡単なのは、もう一つプランターを用意して、朽ち木や腐葉土などを入れ、古い方をひっくり返して、幼虫だけを新しい方に移します。糞と腐葉土は最高の有機肥料、土壌改良剤になります。

蛹と羽化

 いつ頃、蛹になりますか?

 蛹になるのは、去年のような天候異常がなければ、おそらく6月上旬から下旬。成虫になるのが6月の下旬から7月の中旬というところでしょう。

 ひょっとして5月頃にカブトムシが大きくなってどこかへ飛んでいってしまうのではないかと心配になることがあります。網などで囲まないでいいでしょうか?

 鹿児島あたりで5月にカブトムシの成虫が出てくることは、よっぽどの異常気象あるいは温室の中以外、ありません。蛹になるのが、例年だと大体6月の上旬から中旬だと思います。岡山では、6月下旬です。蛹を見たい人は、鹿児島なら6月中旬、岡山なら7月上旬にそっと手で少しずつ掘ってみてください。掘り出した蛹は、金魚鉢のようなプラスチックのケースにでも、一度水を含ませて固く絞ったミズゴケをたっぷり入れて、壁ぎわにでも指でグリグリと蛹のはまるくらいの隙間をつくって頭が上を向くように立てて入れておけば、そこで羽化します。はねが伸びて、はじめ白かったのが、茶色になって硬くなるまでさわらない方がよいです。

 蛹を掘るときと移すときは、傷つけないように気をつけてください。もっとも、しくじって、うまく成虫になれないケースも子どもと一緒に見ておくことは教育的なことでもあります。人間にも蛹的な時期があるわけで、そのあつかいをあやまると...という意味で。しくじったら、また来年挑戦すればよいです。むしろ、成虫は買うことも今ではできますから(1996年、鹿児島市の与次郎ヶ浜にあるニシムタに売っていました;中四国地方から移送されてくるもののようです)、蛹を見ることこそは幼虫から育てる醍醐味です。

 飼育ケースに蛹の段階で移してしまえば、飛んで逃げる心配もありません。プランターのままで成虫が出てくるのを待つ場合、プランターを6月中下旬頃に玄関に移しておくというのが一番簡単です。梅雨の終盤に真夏日がくると羽が硬くなるまで、じっとしていた奴が、夕暮れに出てきます。鹿児島ではそれが7月上旬頃でしょう。ニイニイゼミが鳴きだして、すこししたらという時期です。岡山では、7月中旬のちょうど夏休みが始まる頃です。

 前蛹とは、何ですか?

 うちのカブトムシの幼虫たちは、6月初旬で全員、前蛹(幼虫の皮を脱いでいないが、もう内側は蛹で、脱皮が完了すれば蛹になる)になっています。玄関にプランターごと入れました。虫の嫌いな客には当分の間、勝手口を使ってもらいます。飼育中の皆さんは、しかるべく対処ください。前蛹には触らない方が無難です。思春期の少年・少女のようなものです。

 うちのカブトムシを覗いたら、その前蛹というのを通り越して、皮はぬいでいるけど、背中の殻だけ出来ていないのを2匹も土から堀りおこしちゃいました。こんな刺激が入ると、もう、羽化できないのでしょうか。

 おそらく完全な蛹になっているものと思います。背中の部分は、ハネが腹の側を包む方向にのびて、背中の体節構造がむき出しになっているのであって心配いりません。ちょうど蝶の蛹から蝶が出てきたときにハネが伸びるのと同じで、蛹から脱皮してそれからハネが伸びて、そのうちの前バネが鎧になって背中の部分を覆う形になるわけですから。

 蛹は、垂直に立った状態で体内での変態が進みますから、埋め戻すときにねかせてしまったのであれば、もう一度掘り出してください。また蛹の入っている穴の中に土くれがくずれ落ちていると、うまく脱皮ができません。そういうことで、蛹をのぞいて見てしまったのであれば、掘り出して別の容器にしかるべく収容しなおした方が無難です。

 ミズゴケを買ってきて、水をふくませ、軽くしぼったものを、プラスチックの水槽などに入れたものを用意してください。そのミズゴケのなかに、蛹がはまるくらいの垂直の穴を足の親指大に蛹の体長分くらい広げて、その中に蛹を垂直(頭が上)に入れておき、成虫に脱皮してハネがかたくなる(色が白からカブトムシ色「角や前胸と同じ色」になる)まで、見守ってやってください。

 蛹の中に入った状態で、角と前胸は黒くなります。それが最後の脱皮の前兆です。オチンチンに毛が生えてきたと思ってください。以上。いまくいきますように。うちのはおとといの段階でまだ前蛹のままでした。しくじっても、それも経験です。昨日まで知らなかったことを学びます。それがまた次のときに役に立ちます。

 今日、朝玄関のプランターをのぞいたらカブトムシが2匹上に出てきていて死んでいました。死んでいたのは雌のカブトムシでした。何がいけなかったんでしょうか?上に出てきてから食べるものがなかったのでしょうか?それとももう少し注意してみていれば助けることができたのでしょうか?

 地上に出てきてそれから死んだという事例は始めて聞きます。想像ですが羽化まではまったく問題がなかった。したがって、地上に出てくるまでの過程あるいは地上に出たところで、何かにやられたということになります。まさに変死です。食べるものは、地上に出てから探しますし、出てきてからしばらくは、食べなくても、乾燥しすぎていなければ問題はないはずです。

 わたしが今までの経験で一番可能性がありそうだと考えるのは、殺虫剤です。カブトムシやクワガタムシ(ザリガニも)は、部屋で蚊取り線香を焚くだけで死んでしまいます。いわゆる、蚊取りマットの類でも死にます。ゴキブリ退治の煙の殺虫剤なら完璧です。また、蚊取り線香などを数週間部屋で焚いていると、飼育容器の腐葉土に染み込み、上の方ほど濃度が高いということになります。あるいは、草花用に売っている腐葉土は最初から殺虫剤が混ぜてある可能性もあります。

 もしそうなら、注意を忘れたわたしのミスです。わたしのところでは、玄関(ここでは殺虫剤をつかわない。玄関までの客には我慢してもらう、あるいは、蚊にかまれてもらって早々に退散していただく)が、その理由で虫の飼育場になっているのでした。

カブトムシ(成虫)の育て方

 カブトムシの育て方を教えて下さい

 あまり手をかけないのが、長続きの秘訣です。息切れしてしまううような飼い方では、続きません。また、あまり触りまくるのもよくないようです。コツは、長続きのするデートの場合と同じです。相手を思いやる愛がなければいけません。

 いわゆる「カブトムシゼリー」は、購入する必要はまったくありません。もしゼりーをやりたいなら、人間用のゼリーでかまいません。その方が安いですし、保存剤の量がおさえてあるはずです。そちらなら、問題無くもちろん人間が食べることもできます。カブトムシゼリーは、人間には全くおいしくありませんし、非常食やおやつとしての転用は望めません。人間用のゼリーのうち、もっともカブトムシやクワガタムシが喜ぶのは、どうもカルピスゼリーのようです。カルピスは蝶の成虫を飼うときにも、人間が飲むくらいの濃度で喜んで吸ってくれます。糖以外にも微量のタンパク質およびミネラル類が含まれているのがよいのかもしれません。クワガタムシにラードと黒砂糖で作った栄養剤をやる人もいるようですが、わたしは、そこまでためしたことはありません。

 果物のうち、リンゴは取り替えの手間が楽(貯蔵のできる果物)なので一番のおすすめです。安くて、カブトムシやクワガタムシの喜ぶのは、安売りの(店頭で時間がたってそろそろアバタのできてきた)バナナです。発酵中のバナナなどに集まるショウジョウバエがいやな人は、飼育ケースの蓋の内側に新聞紙(通気はそれで十分)でも一枚はさむといいです。

 酷暑の高温には弱いので、飼育ケースの置き場所には十分配慮してください。直射日光が当たる場所など、最悪です。木陰で涼しい森の中が、カブトムシのすみかです。

 クワガタムシの育て方を教えて下さい。

 クワガタムシの成虫は、適当な大きさのすこし堅めの朽ち木を入れてやると、朽ち木に孔をほったり、その下にもぐったりして隠れて休みます。その下は土だけよりは、適当に落ち葉などがまじっている方がよいでしょう。今からの季節(秋−冬)は、乾燥に注意が必要ですが、過湿(と高温)による失敗(体にダニがついたりカビがはえる)の方が多いようです。冬眠するわけですから、その眠りを妨げないように、邪魔をしないように、家の中で、零下にはならないけれども比較的寒いまま安定するところに置くのが冬の管理の秘訣です。ようするに適度にほったらかしにできる所をえらんで、保管するのが楽で、虫のためにもなります。

 ネコが日向ぼっこをするような気温が乱高下する縁側などダメです。気温が上がると代謝が高くなって、眠ったまま代謝を下げた状態を維持しようとしているときには逆効果になるわけです。冷蔵庫の野菜室に入れてもよいかもしれません。交尾相手の見つからないチョウの成虫を、相手がみつかるまで一時的に保管するのには、わたしは冷蔵庫をつかいます。ただし、クワガタムシの飼育容器を入れると野菜が入らないし、専用の冷蔵庫を置く場所もないので、それはしていません。冬、寒い部屋には不自由していません。

 餌は、カブトムシと同じです。リンゴならクワガタムシのメスなど、自分で孔をほってもぐったりするはずです。

 クワガタムシの飼育については、最近は多くの書籍が出版されていますが、ぴか一の参考書として、小島啓史『クワガタムシ飼育のスーパーテクニック』(むし社、1996;月刊むし・ブックス1)があります。

 今うちの虫かごの土の中にクワガタムシが3匹ほどいるのですが、当然住処は別に作るんですよね。

 別に作った方が無難です。クワガタムシは意外に獰猛で、とくにメスは他の幼虫(カブトムシの幼虫を含む)を殺して食べてしまうことがよくあります。オスのクワガタムシでさえ、メスに食われることもあるそうです。クワガタムシとカブトムシは成虫同士も相性がよくありませんし(餌場をめぐってケンカする)、幼虫もおそわれるとなると、格闘とその結末を観察するのが目的でなければ、分けて飼育した方がよいでしょう。

他のカブトムシのページ

かぶと虫を探しに行こう
  http://www.ht-net21.ne.jp/~kouichi/kabuto.htm